木工の逃げ

材料が動く木工では、逃げがどうしても必要

木工では、逃げ、という言葉を使う。製造業全般で使うかもしれない。
ぼくは、木工を始めて、最初にこの逃げというものを知った時、とても感動した。逃げという考え方を知って、さらに木工が好きになったのを覚えている。

逃げとは、80点を狙う戦術だ。欠点はゼロではないが、その欠点を補うだけの安全と安心が得られる。確実性が増す。具体的に言えば、とくに可動部分によく使われる考え方で、引き出しの中箱を、ちょうど良い寸法よりもさらに2ミリ小さくするときに、2ミリ逃げた、という。中箱も木材だし、本体も木材だから、当然反ったり縮んだりする。今はちょうどよくても、のちのちきつくなってしまうかもしれない。だから、ちょっとゆるめになってしまうけれど、2ミリ逃げて、安全をとろう、という判断をする。

あそび、も逃げにちかい概念だ。逃げの方が時間を考慮しているニュアンスが強いか。
どれだけ逃げるか、どんな時に逃げるか、どんな風に逃げるか、職人をそんな視点で観察するとけっこう面白い。