材料を落とした! あの岩田さんが!

作業中に椅子のデザインを思いついた

岩田さんが材料を落とした。詳しく言えば、椅子の脚の部材を10脚分、台車に積んで移動中、床に落ちていた木っ端のせいで台車が急停車し、そのはずみで部材の山が倒れて、数本の材料が床に落ちたのだ。
これはものすごく珍しいことだ。岩田さんはまずものを落とすことがない。ぼくなんて疲れてくるとしょっちゅう材料や道具を落とす。ものを落とし始めたら、それは疲れているサインだと認識しているくらい。ついでに言えば、岩田さんは木工につきものの音があまりしない。とにかく静かに作業する。蓋を閉める時、歩くとき、ものを置くとき、ぜったい意識的に訓練してきた結果だろう。
材料がちらばったのでぼくも拾ってあげたけど、これまためずらしく岩田さんがはにかんで「すまん」と言った。いや、そんなぼくなんかに謝らないで〜って感じで恐縮しました。

あともう一つの事件は、椅子のデザインのアイディアが少し浮かんだこと。背もたれの部分だけだけれど、今までにない構造というか、作りやすい構造でありながら、背中のあたりも良くなりそうなアイディア。急に浮かんだアイディアで、かつ手応えのようなものがあったので、五分くらいただ立って、あれこれ考えてしまった。
日頃から、工場長たちに集中して考える時間を持て。立ち止まるしかない時間を持て。と言われていたけれど、これだな。これのことなんだな。ちょっとエキサイティングな体験だった。気持ちいい、と叫びたくなるくらい。