デザイン多作になりたい

木工パワー全開の二人

工場長も岩田さんもパワフルだなと感じる。作業中の後ろ姿を見るだけで、近づきがたいこともある。
二人とも、別に押しが強いタイプではない。声だってたいてい小さすぎるくらいだし、何かを強く意見することもない。体も細身で、体力的にはぼくの方が勝っているかもしれない。一見、気弱な性格に見える。

二人のオーラを支えているのは、その多作ぶりだ。
自分で考えたもの、オリジナルのものを自信をもって、誇り高くお客に提供する。それを信じられないくらい短いスパンでこなす。その木工仕事のこなし方を間近にみて、力強く感じるのだ。

また、二人は自分が作ってきたものを振り返っていない。発表したものが雑誌に載り、購入者から賞賛の手紙が来ても、まったく浮かれない。興味がないみたいに見えるし、実際興味がないようだ。その、自分たちの努力の結果すらも視界に入らない、自作への集中ぶりにパワーを感じてしまう。

それくらいのめり込みたい。まわりが見えなくなるくらい解き明かしたい課題がほしい。
切り替え早く次の家具へと意識を移動させていく能力もほしい。

新作の椅子の笠木を成形している岩田さんに声をかけた。

デザインするとき、アイディアをメモしたり、図に描いたりしますか。

昔はしたよ。でも今はしない。頭の中にいろいろ浮かべている。それで十分だって気づいたから。紙に描くより、3Dでぐるぐる回すより、頭の中で絵を描く方が数倍早い。

早いといいんですか。

うん。早いほうがいい。アイディアが、発想が、拡がる時間は短いから。描くのが早ければ、いっぱい拾える。ポイントを押さえて描ければ、つかむべきものをつかめる確率が上がる。

岩田さんはそう言って、接着剤の準備をすまし、組み立て作業に入った。

小さいものから作る。この手でつまんだチェリーの木っ端で、何ができるだろう?

アクセサリー……
キーホルダー……
おもし……

あ……、ひとつアイディアが浮かんだ。いける、気がする。
ぼくはその木っ端を手にバンドソーに向かった。